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「無限」の恐怖
by 日詰明男
(友人への返信)

福島原発の惨状を目の当たりにしても、東電の幹部はまるで他人事のような物言いをし、まるでウルトラマンかドラえもんの登場を期待しているかのようです。
現実感の喪失。
ヴァーチャル・ゲームのやりすぎ、漫画の読みすぎは引きこもりだけではなかったようです。

遠くドイツでは、人知学徒たちがこの危機を正しく敏感に感じ取り、人々の心を動かしたのでしょう。
彼らの行動力、組織力は目を見張るものがあります。
80年代のドイツで反原発路線に火をつけたのも緑の党でした。
現在もふたたび立ち上がったのでしょう。

二号機、三号機の破損状態から見ても、冷却系が復活するなどとは到底思えません。
設備が吹っ飛び、海水をしこたま投入し、誰も近づけぬほどの放射線量に至ったこの状況でも、東電や学者はマニュアル書どおりの手順で事をすすめるつもりのようです。
新しく投入する水はすべて汚染され、そのまま心太式に蒸気や排水として環境に出るばかり。
このままむなしい放水と見込みのない修理を何年も何年も続けるのは、国民にとって精神的にも肉体的にも耐えられません。
福島原発はまるでブラックホールのように人の命を片っ端から飲み込もうと口を開けています。
このままだといずれ作業員の不足から徴兵制のようなものが敷かれても不思議はありません。

今の段階で、土砂をかぶせても融けるだけだと学者は言います。
確かにチェルノブイリの石棺のように、土砂やコンクリートを節約したならば、耐久性はあまり期待できないでしょう。
せめて地下核実験の域に持ち込むまでに、大量の土砂で地層を一層一層積み上げていく。
安息角の斜面をなす裾野の広い人工火山の形になるでしょう。
自然火山のマグマだまりも地下深くで岩石を溶かし続けているわけで、ある程度の地層があれば、休火山で収束する可能性はあります。
「核分裂火山」はもうそのような形におさめるしかないのではという諦めの形です。
いまさら地下深くには埋められませんから、山を築くしかないと。

今まで無数のダムや堤防をひっきりなしに建設してきた日本の土建屋さんならば山を築くなど朝飯前のはずです。
こんなに彼らが頼もしく見えたことはありません。
三菱、東芝、日立、石川島播磨には、放射線を遮蔽する重装備の特殊ブルドーザー、バックホー、トラック、コンクリートミキサー車を緊急に製造してもらわないと。

「正しいパニック」という語を多くの人が口にし始めています。
僕が知る限りでは広瀬隆氏が最初に言ったと思います。
この語が今一人歩きしているようです。

発電や送電、蓄電のロスを考えると、どんな方法であれ「電気」は基本的に割のあわないもの。
それでも必要だから人々は利用してきました。
照明や公共交通、コンピュータなら利用する価値はあります。
でもトイレの便座までにはどう考えても電気は必要ではないですよね。
オール電化などもってのほか。
クーラーも皆がせーので止めれば都市はかなり涼しくなるはずです。

原子力は「必要悪」のレベルではなく、正真正銘の「悪魔的なるもの」であることが誰の目にも明らかになりました。
リスクは有限だからこそ技術の中に折り込めるわけで、無限性を帯びた核分裂というリスクは、ねずみ講同様に、有限の地上に存在してはならないシステムなのでしょう。

|| 07:56 | comments (x) | trackback (x) | ||


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