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アトランタでピアノ・リサイタルを聴いたのだが
by 日詰明男
3月14日、アーティスト・イン・レジデンスのホストが息抜きにピアノリサイタルに連れて行ってくれた。
奏者は2度もショパン・コンクールで優勝したという中国人ピアニストYundi Liである。
チケットを見ると$40とあり、いい値段である。
会場はアトランタ市街のど真ん中に位置するジョージア工科大学キャンパス内にあるコンサートホールだった。
私たちは無料の立体駐車場に車を停め、会場へと向かった。
ジョージア工科大学のキャンパスは大変広い。自動車で相当走っても敷地から出られない。
建物も立派である。
地方の州立大学にしては規模や設備が抜群に充実している。
これもコカコーラ社がかなりサポートしているのだそうだ。
かなり優秀な卒業生を輩出しているという。

会場はほぼ満席で、アメリカにいることを忘れさせるほど多くの中国人が占めていた。しかも家族連れが多い。
教授や学生など、この大学の関係者も多いのだろう。
ここでも中国の勢いを感じた。

演奏はモーツアルト、ショパン、リストと息をつく暇もなく続く。
すべて暗譜で弾かれ、めいっぱい緩急をきかせた演奏だった。
音量も、拡声器を併用しているとしか思えないほど大きく、最初はそれが気になって仕方がなかったが、彼の演奏スタイルからすれば音量の幅があればあるほど表現の自由度が広がるので歓迎しているのだろう。
高いところにある水ほど利用価値が大きいことと同じである。
とにかく音量、テンポ、スタイルなどすべてにおいて変化に富み、刺激的である。
まるで奔放な草書体による書道作品を見ているような感覚だった。

前半の見事な演奏が終わり、すごい拍手が沸きあがった。
私の隣の中国人女性はすかさずスタンディング・オベーションをしたのでちょっとたじろいだ。

休息を入れて後半はムソルグスキーの「展覧会の絵」が演奏された。
奏者は信じられない正確さと指圧で鍵盤をたたきまくる。
いよいよクライマックスにさしかかろうというとき、なにやら騒音のようなものが聞こえ始めた。
雷か?
ときおり非常灯もちらつく。
やがてその騒音はどんどん大きくなり、明らかに外は雷雨であることがわかった。
雨の音もはっきり聞こえる。
ステージではまるで外の雷雨と戦いを挑むような彼の演奏が続く。

しかし、やはり豪雨の音はすさまじく、演奏者も聴衆もどこか集中力を失った感は否めなかった。
音楽会としてはアンラッキーなことである。
雨の音が聞こえるコンサート会場なんて意外に安普請なのだなあとそのときは思った。

ようやく演奏が終わる。

ほとんどの聴衆は立ち上がり拍手する。
私も前が見えなくなったので仕方なく立ち上がった。
先ほど立ち上がった隣の女性は今度は立ち上がらない。
演奏に感動できなかったのであろう。
どうせ外は雨だし、できればアンコールを聞きたいという不遜な動機で、私も拍手に参加した。
演奏者は2回ほど出てきたが、結局盛り上がりに欠け、拍手は途切れてしまった。
なんとなく不完全燃焼の気分を残して、私たちは会場を後にした。
外に出るともう雨は上がっていた。

ダウンタウンは緊急車両のサイレンがずっと鳴り響いていた。
なにか事故でもあったのだろうか

その晩床についた後も、遠くからサイレンの音が一晩中聞こえた。
私はついに幻聴が聞こえるほど耳の調子がおかしくなったのかと自分の体を心配したほどである。
あるいはその日あまりに多くのサイレンを聞いたため、本当に幻聴として残っていたのかもしれない。

アトランタのダウンタウンでトルネードの被害があったことを知ったのはその数日後である。
ちょうど私たちが呑気にコンサートを聴いているころ、トルネードはわずか1マイル先のオリンピック記念公園で発生し、大きな被害を残していった。
たまたま進む方向が当たらなかっただけで、私たちが被害を受けていても全然不思議はなかったのである。

トルネードは人類が森林を伐採し、広大な芝生の公園を作ったり、過密な摩天楼を作ったりしたことが原因だと言われる。

さらに思い当たる節がある。
着陸前の飛行機から見る風景にはその国の価値観が見て取れるものだ。
たとえば、成田上空では山の頂の大半が虫食いのようにゴルフ場開発されていることが目立つ。これは水源に毒を撒いているようなものであろう。
中国広州に降り立ったときは、都市のいたるところで溶接のスパークが見えた。中国の土木建設がいかに盛んであるかを物語っている。
ニュージーランドに下りたときは穏やかな湾に無数のヨットが浮かんでいた。
アトランタ上空では、以前ブログに書いたように、郊外宅地開発が進んでいることが目に付いたが、そのほかにもう一点特徴的なことがあった。それは高圧送電線の異常な多さである。おそらく大半はどこぞの原子力発電からの調達で、気前良くばんばん使っているのであろう。
昨年、真夏のアトランタ空港で乗り換えたとき、空港内は真冬のように寒く空調が利き、洗面所の水道からは熱いお湯が出てきてびっくりしたものだ。
こうしてアトランタは上昇気流が非常に起こりやすい地勢となっているのだろう。

アトランタのビル

左の写真は多くのガラスが剥げ落ちた摩天楼である。(John Portman設計)。
風によって剥がされたのではなく、おそらく気圧差で一種の爆発が起こったに違いない。
おそろしいことである。
高層ビルのカーテンウォールは、内部から外部へ向かう力に対して非常に脆弱であることが明らかになった。

こんな状態でもビル内部は通常営業していた。
壊れた窓はすべて合板で塞がれていた。
飛ばされたガラスは広い範囲に被害をもたらした。
残されたガラスも未だ落ちるおそれがあるため、現在もなお立ち入り禁止の街路は多い。


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