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コスタリカ報告09 道具
by 日詰明男
コスタリカの現実に触れるほどに、日本の茶番政治や土建屋主導の都市計画、刹那的流行、いじめ社会、悲壮な労働環境など、なんでこうなるのと、どんよりとした気分になるばかりだ。

だが、コスタリカで発見する好ましき日本もある。

アルフレッドがクボタ耕運機を家宝にしていたように、コスタリカにおける日本製品への信頼は非常に高い。
電動工具はマキタ。自転車はシマノ。自動車はトヨタ、スズキ、イスズ。バイクはホンダ、ヤマハ。オーディオはソニー、パナソニックが席巻している。
彼らはそれらの道具を壊れるまで、というよりも、壊れても使っている。
余談だが、かくいう私もソニーのトランジスタ・ラジオを30年以上愛用している。
このラジオはすごい。
実は数ヶ月前に、このラジオを聞きながら屋根に登って作業していたところ、誤ってアスファルト道路に落としてしまった。
ついに壊してしまったかと思いきや、少しへこんだだけで今も何の問題も無く作動している。
こんな丈夫な電化製品がほかにあるだろうか?音質も感度も燃費(電池のもち)もいい。
ちなみにこの旅行にも携帯している。
ラジオはソニーにかぎる。
ソニーはアイポッドやアシモなどの後を追うよりも、この創業時以来の基本路線を守ってほしいものだ。

コスタリカの人は誰もがトヨタを絶賛する。
トヨタといってももちろんプリウスのような高級車ではなく、四輪駆動オフロード・マニュアル車である。
余計なアクセサリ(電気設備)が無ければ無いほど好まれる。
単純なものほど壊れにくいし、修理しやすいからである。パワーウインドウなどはもってのほかである。橋の無い川を渡るときに命取りになりかねないからである。
ガソリン代が高く、悪路の多いこの国では、自動車の耐久性と燃費が最優先される。
コスタリカはいわば世界最強の車を選抜する公開実地試験場のようなものである。
その厳しい淘汰の末に日本車が圧倒的シェアを占めている事実は製造業冥利に尽きるといえるのではないだろうか。いいものを作れば、政治介入や派手な宣伝などしなくても、人々に広く受け入れられるものである。
トヨタも環境にやさしいかどうかはなはだ怪しい燃料電池車などに社運をかけるよりも、このような長持ちする自動車を地道に作り、無期限のアフターサービスに徹してもらいたいものだ。それが何よりのエコロジーであり、おそらく真っ当な社会的使命である。

大工道具などのいわゆる「鉄器」も日本製が大変評価されている。
そういえばニュージーランドの大工さんも日本製の刃物やハンマーを持つことをステイタス・シンボルにしていたものだ。

国際的に評価される日本文化として寿司や漫画やゲームばかりが脚光を浴びがちだが、「すぐれた道具」こそが日本の底力という気がする。
大工道具から日本車まで、そのクオリティの高さは、おそらく江戸時代から連綿と続く頑固な職人精神に支えられてのことだろう。

いっぽうコスタリカにはコスタリカの注目すべき道具がある。
刃渡り60センチほどの大鉈で「Machete(マチェテ)」という。マチェテ
これは中米で普遍的に使われているナイフで、エルサルバドル製が定番だそうだ。
一説ではマヤ起源の剣だとのことである。
アルフレッドたちも、日常の作業はほとんどこれ1本で済ませている。ジャングルの藪を切り開いたり、木を切り倒したり、ココナッツを割ったり、蛇から身を守ったり、いわゆる万能ナイフである。
男はみなこれを腰に下げて仕事に出かける。
熱帯雨林を案内してくれた現地の人も、この大鉈で道を切り開きながら先へ進むのだが、そのとき鳴り響くシャキーン、シャッキーンという音がなんとも心地いい。
いろいろな幅や長さのマチェテがどの町のハードウエア・ショップでも手に入る。
高価なものと思いきや、立派なものでも1本300円もしないという驚くべき安さである。
このことはこの大鉈がいかに生活に密着しているかを示している。
どの国でもそうだが、生活必需品は安いものだ。その国の価値観を知る手っ取り早い方法は、スーパーへ行って異常な安さの物を見つけることである。チューリッヒは世界で最も物価が高い都市だが、それでもチョコレートだけは安かった。

売られているマチェテは刃が未仕上げのままで、すぐに使うことはできない。
自分の手でせっせと磨ぎださなくてはならない。長さが長さだけに大変だが、それもよきかな。
牛皮製の鞘もなかなか装飾的で私はとても気に入った。

嬉しいことに、ここでの制作活動のご褒美として、地元の皆さんの厚意で典型的なマチェテを一本いただいた。
私もコスタリカの男として認められたということだろうか。
返礼に、日本から持参した竹割り鉈と竹引き鋸を差し上げた次第である。


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