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電気を熱に変えるのは控えよう
by 日詰明男
原発依存から脱するために電気の使い方の見直しをしよう。
一口に言って、電気を熱に変える機器の使用は極力控えるべきである。
冷暖房、厨房器具に電気を直接使うことは、飲料用に処理された上水道をそのままトイレ排水に使うことに等しい。
これには根拠がある。
私は1997年、スイスとドイツでの仕事の際に、TECHNORAMA(テクノラマ)という科学博物館に立ち寄った。Tretgenerator
そこにTretgeneratorという装置があって、来館者が自転車ペダルで発電し、さまざまな電化製品を選択して動かせるものであった。
実際に動かしてみたところ、テレビ、ラジオ、照明はまったく問題なく、動かすことが出来た。
ところが、ビーカーの水を暖める電熱器に切り替えた途端、急にペダルが重くなった。
必死でペダルを漕いだが、水温がわずか1度上がるか上がらない段階で力尽きた。
事ほど左様に、電気を直接熱に変えることは大変効率が悪いのである。

従って、日常的生活において電気の使用は通信、照明、大量公共交通、計算機ぐらいにとどめた方がいいと思う。
南極や宇宙ステーションなどの極地はこの限りではない。

では暖房、厨房はどうするか。
簡単なことだ。薪を燃やすのが一番効率が良い。
たとえば、熟練が必要だが、一合の米を炊くには一合程度の松ぼっくりを燃やせば十分である。
熟練しなくても少々の薪でご飯が炊けるのは殆どの人がキャンプで経験されたことがあるだろう。
しかし、前述のペダル発電機を十数人分増やし、大勢で必死で漕いでも一合炊けるか炊けないかなのである。
「薪を燃やすと二酸化炭素が出て問題だ」と言う人が必ず現れるだろう。
二酸化炭素が出て問題なのは石油や天然ガスなどの化石燃料を燃やした場合である。
薪を燃やす行為は、大気中の二酸化炭素から炭素固定したばかりの植物から炭素を解放させているだけなので何の問題もない。
燃やさずにそのまま腐らせたとしても等量の二酸化炭素はいずれもとの大気中に戻るのである。

冷房はどうするか。冷房は風通しや日陰を基本とし、建築の「設備」ではなく「かたち」で解決する。
日本建築には昔から「建築は夏を旨とすべし」という金言がある。
「断熱」より「風通し」を優先させる。同時にアトピーなどの現代都市病も無くなるだろう。
周囲の緑や中庭も有効だろう。
田舎に移住するのが手っ取り早いが、都市も不可能ではない。
モロッコのフェズは灼熱の砂漠にある人口密集都市だが、エアコンがなくても涼しく生活できていた。居住空間は幾重もの日陰に守られ、中庭や吹き抜けを巧妙に利用して対流を生じさせ、快適な風通しを実現していた。

以上のような限定された電気使用だと、マイクロ発電で十分自給できるだろう。
これから電気も地産地消するようにしなければ。
ひと昔前の京都は琵琶湖疎水の水力だけで市電を走らせたり、西陣の機械を動かしたりしていた。
その規模に戻ればいいだけの話である。


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