STAR CAGE
個展 黄金比の鐘楼


黄金比の建築に、黄金比の音色、音階、ポリ・リズムが響く

Solo Show "Golden Bell Tower"

©2007 Akio HIZUME

12-17 June 2007
gallery G, 広島

材料は千葉県で制作し、1.5トントラックで広島まで運んだ。
茶室の組み立ては2時間ほどで完成。
茶室の高さは5m弱である。


屋外パフォーマンスとして制作した星籠を池に生ける。


茶室の小屋組はフィボナッチ葉序に基づいている。
茶室を中心に天井から吊るされている8つの星籠照明も、同様のフィボナッチ葉序に従って配置させた。
8つの星はBGMの8つの音に一対一対応させた。低い位置にある星ほど低音で単純なリズムに対応し、呼吸するように点滅する。

音と光はMAX/MSPでリアルタイムに生成/制御した。
音楽は「黄金比の音色」を「黄金比の音階」に乗せ「黄金比の自己相似リズム」を刻み、約69年かけて循環するパターンである。

なんといっても今回の展示の目玉は、特殊なスピーカーを茶室の壁に埋め込んで、茶室全体を直接振動させることが狙いだった。
この音響は茶室の内部で聴くに限る。
文字通りスピーカーボックスの中で音を聴いているようなものである。
かなりの音量にしても不快に感じなかった。
高音ほど茶室の上部で鳴り、低音ほど底部で鳴っているように聞こえ、効果はてきめんであった。
竹に触れると激しく振動しているのが分かる。

茶室内部で録音した音を聴く


茶室内部から躙口(にじりぐち)を見る。
小屋組の頂から吊り下げた自在鈎(じざいかぎ)に鋳物の重い鍋をかけた。
鍋の中にハロゲン・ランプを仕込み、夜間にゆるやかに点滅させる演出をした。
もちろん鍋は将来実用することを想定しているが、この展示では高輝度ハロゲン・ランプの支持体としての役割を持つ。同時に振り子として機能し、茶室の小屋組を五重塔のように安定させてもいる。


例によってフィボナッチ葉序の見上げ。
この竹の配列が音や光を最大限に乱反射させる。竹の長さもさまざまなので、満遍なく倍音を反響させることだろう。
いわばこの建築は天然竹によるイコライザである。
わずか6日間の展示だったが、次の機会があればできるだけ多くの人にこの音響空間を体験して欲しい。
黄金比の音楽と相俟って結構病み付きになると思う。
もちろん他の音楽も試聴に値する。
実は観客がいないときに、個人的な好みでテリー・ライリー「シュリキャメル」、佐藤聡明「マントラ」、バリ島ヌガラのジェゴクなどのCDを試聴した。
なかなかの臨場感で、自分で言うのもなんだがこれは贅沢である。
音域の幅の広い音楽であればあるほど効果的なようである。

最終日にはトウミヤタカシさんが、ライブの前に立ち寄ってくださり、即興で茶室の中で馬頭琴とホーメイを演奏してくださった。
願ってもないハプニングだった。
演奏終了時には居合わせた観客から自然と拍手が沸き起こった。
もちろん録音したが、すぐにその茶室の中で再生し茶室の中でお聞かすれば、どんなに素敵だったろう。
あまりにもとっさの出来事で、思いが至らなかったことが悔やまれる。


夜間、ハロゲンが点灯すると螺旋状の影が会場全体を満たす。吊るされた鍋を揺らすと世界が揺れる。
閉館後も照明コントロールは続けられ、公共空間に面しているこの画廊では、ガラスのファサードを通して事実上24時間の展示となった。


主催: 日詰明男展実行委員会(植田信隆)

協力: art space kimura ASK?


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