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小出裕章氏らの水掛け論にあえて物申したいのだが
by 日詰明男
第一原発の圧力容器内部では、震災後わずか16時間でウラン燃料がすべてメルトダウンし、厚さ十数センチの鋼鉄製の底を溶かして穴を開け、格納容器まで落ち込んでいたことが判明した。
さらに格納容器の底を破って、地下に落ち込み始めていても不思議はない。

つまり炉心は冷却がまったくされていなかった。
冷却すべき対象はとっくの昔に解け落ちていた。
皮肉にも、今まで真水によって圧力容器内部をせっせと洗浄していたようなものだ。
圧力容器の内部は除染され、今や福島原発敷地内で最も安全な所かもしれない。
事実上、外界にすべての放射性物質は流出したも同然である。
大気汚染、海洋汚染、作業員の被爆という多大な犠牲を払って行った2ヶ月に及ぶ冷却作業だったわけだが、残念ながら空回りに終わった。

「閉じ込める」作業は初期の段階から完全に失敗していた。
注水によって冷やそうとした行為は、放射能の拡散を助長していたことになる。
水蒸気として、そして海水への漏出として。
「今までわからなかった」で済む問題だろうか。

一、二、三号機とも、最初の爆発以降、二ヶ月間、冷却がまったくなされていなかったにもかかわらず、小出裕章氏をはじめ、ほとんどの学者たちがもっとも恐れる圧力容器内での水蒸気爆発は起こらなかった。
なぜ二ヶ月間、水蒸気爆発が起こらなかったのか、科学的な説明と反省が必要である。
私たちは冷静にこの失敗から学び、別の実効性ある方法を考えるべきである。

結果論であるが冷却は必要なかったということになる。

あとはチャイナ・シンドローム化した燃料塊が地下水脈と出会ったときの爆発だけが懸念される状態になった。
小出氏はおそらくそれは起こらないだろうと言う。
小規模な臨界が起こったとしても、自然な膨張によって燃料塊は適度に分散し、やがて落下は停止するだろうとみられている。
そうあってほしいと私も思う。
これはスリーマイル原発の収束の仕方と同じである。

しかし私が驚くのは、「今後も引き続き水を掛けろ。それしかない」と小出氏はおっしゃる。
これはどうしても理解できない。
「圧力容器の破壊を防ぐため」という大義名分では冷却の意味がなくもなかったが、もはや圧力容器も、格納容器も破られている状態でなお水で冷やすことに何の効果があるだろう?
汚染水の回収が不可能という理由だけではない。
水だろうが何だろうが、何をかけようが核分裂あるいは崩壊熱は冷えない。
究極の「焼け石に水」である。
水など掛けている場合ではない。
いくら表面を冷却しても内部は決して冷却されない。
そんな行為はむやみに汚染された水蒸気や水を大気や海洋に垂れ流すだけである。
加えて、ウラン塊に水を注ぐことは中性子の減速や反射をひきおこし、臨界を誘うおそれもあり、火に油をそそぐようなものではないのか。
狙いどころが悪ければ、それこそ小出氏の恐れる水蒸気爆発だって起こりかねないのである。

二号機、三号機もおそらく状況は同じである。

暴走した原子力という怪物は、膜や壁程度のもので封じ込められる代物ではない。
対症療法が通用しないということは、この二ヶ月間の結末を見ても誰もがいやと言うほど思い知ったのではないか。

大量の固形物での冷却と封じ込めを切に望む。

石棺化、あるいは「核分裂火山」建造にとっとと着手すべきではないだろうか。
二ヶ月前に着手していれば、ここまでの拡散はなかっただろう。
これは人類全体、いや地上の生物全体にとって悔やんでも悔やみきれない失策になった。
生物の重大な命運を、一企業の東電に握らせていたとは。。。

もう一度言おう。
いったん空焚きとなった炉心に水を掛けたのは最初から無意味だったし、今後も逆効果である。

この水掛けの是非は水掛け論に終わってしまうのであろうか。


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